2003年の創業から ”欲しいものを形にする” をテーマに、スクーターに特化した斬新なハードカスタムやフレームビルドで世界中の注目を集めてきたオートバイカスタムメーカー 「SONIC CRAFTY」。
近年は、個々のカスタムオーダーに加え、1メーカーとしてコンプリートバイクの生産にも力を注ぐ中、今夏最新作となる「KATE-GEV600」が発表された。
輸入EVスクーターGOCCIA(ゴッチア)のGEV600というモデルをベースに、随所に渡りカスタムが施された今作のテーマは『農業』。
これまでSONIC CRAFTYは、代表の木下氏自身が生粋のサーファー・スケーターであることから、 サーフ / スケート / キャンプシーンを想定したカスタムを得意とし、数多くの車両を手掛けてきた。
そんな同社が今回、乗り手のターゲットを”農家”に絞った経緯とは?
木下氏に話を伺った。
木下:
近年、電動スクーターやバイクが多く出てるけど、販売してるメーカーってそのほとんどが都会に住んでいる人ベースでプロモーションをかけてるんですよね。
今回のベースとなったEV車両GOCCIAを、沢山の人に乗ってもらうにはどうすれば良いか、人に喜ばれるにはどうすれば良いかを考えた時に、とかく本当に電動スクーターを必要としているのは、都会じゃなくて過疎化している田舎なんじゃないかって思ったんです。
というのも昨今、田舎のガソリンスタンドって、EV文化の普及とか消防法の改正で地下タンクを新たに新設しなきゃいけなかったりとかで、どんどん廃業が進んでるんですよ。
田舎で作業してる農家さんたちに「そうすると、軽トラックや農機具に使うガソリンや灯油ってどうしてるの?」って尋ねたら、「わざわざ一山超えて、下手したら一時間ぐらいかけてガソリン使ってガソリンを買いに行ってるんだ。」って話を聞いて。。。
これは家でも充電出来る電動の乗り物を、今本当に必要としているのは地方の田舎の人達なんじゃないかって。
その上で、実際に農家さん達に「本当に欲しいと思ってる二輪車両はどういった物ですか?」っていう聞き込みをしたんですよね。
幸いうちの周りには農家さんいっぱいいるので。
すると皆んな口揃えていうのが『長尺物を積みたい。』
長尺物っていうのは、芝刈り機・ホウキ・スコップ・クワとか、全部長手の道具なんだよね。
じゃあ長手の物を詰めるバイクを作ろう!ってなった時に、今までサーフボードを積むためにキャリアを付けてた発想をそのまま活かせるじゃんって。
サーフキャリアって名前じゃなくて、例えばクワスタンドにするとかね。 笑
買い物カゴが載せれるサイズで作ったラックには、背負いカゴがぴったりとはまるので収穫物やいろんな道具を入れて運べる。
ボディサイドはCORDURA®fabricを使っていて、ドリンクホルダーやポーチを装着出来るようにしたんだけど、これもキャンプ仕様の発想が活かされてます。
真ん中に付けたのは長靴入れになるラックですね。
■環境について考えられているのもポイントですよね。
木下:
今現在、国内外問わず電動スクーターや電動キックボードって、沢山のモデルがリリースされている中、どれも壊れたら修理が効かず “使い捨て” の懸念が拭えないのが実情。
環境に配慮して、持続可能な世の中にすべく生まれた電動化の波ですが ”使い捨て” では本末転倒な気がします。
その点、「KATE-GEV600」は全国に9000店以上のネットワークがあって、安心してメンテナンスやアフターが可能になるので、本当の意味で環境問題に取り組んだ車両とも言えますね。
■これだけ積載機能が充実していると、乗り手によっていろんな用途で使えそうですね。
木下:
ほんとそうなんですよ。
農家さんに向けた車両だけど、この利便性はもちろん都会の生活でも役に立つと思いますし、要はサーフキャリアをクワスタンドにしたみたいに、乗る人の発想やライフスタイル次第で色々変えていいと思うんですよね。
この長靴入れだって、例えば「犬バスケット」って名前にして犬も載せれるぜって感じで。 笑
■今後KATE-GEV600は、どういった展開をされていく予定ですか?
木下:
やはりまずは沢山の農家さんに使って欲しいというのが一番にあるので、例えばトラクターショーだとか農協が主催する収穫祭とか、そういったイベントに積極的に出展して多くの方にお披露目したいですね。
そこから発信した事が、「これ便利そうだな」とか「カッコいいな」って都会の人達のアンテナにも引っ掛かってくれれば良いかなと思っています。
元々はタイヤもロード寄り、街乗り用の簡素な電動スクーターは、長年ボードカルチャーとアウトドアシーンでの利便性を追求してきたSONIC CRAFTYの技術と発想により、アグリ仕様として新しいバイクに生まれ変わっている。
そして、実際に多くの農家さん達に聞き込みし、その声ひとつひとつを車両に反映させたモノづくりへの姿勢は、これまでカスタムメーカーとして、様々な要望を具現化し続けてきた木下氏の、乗り手の欲しいものをカタチにするという”想いやり”の賜物。
それは農家に限らず、様々なライフスタイルの一部として多くの人々の生活をより楽しく充実したものへと導いてくれる。
「KATE-GAVE600」は、まさに”モノ”より”コト”をカタチにした、”アイデア”と”乗り手への想い”が詰まった二輪車両だ。
【SONIC CRAFTY】
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■Interview / Text / Photo
by YOSHIWO NISHIIMURA
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